本文へスキップ

       







7,000点以上のすごろくを蒐集している"日本一のすごろくコレクター"山本正勝さん。
私設すごろく資料館「翔奉庵(しょうぶあん)」
の訪問記(2009年)です。



●山本正勝さんの著作「絵すごろく 生いたちと魅力」との出合い

2009年、当時の私は二鶴堂「ぽてっと君すごろく」を制作していたこともあって、
すごろくに強い関心を抱いていました。
「すごろくは一体いつから存在するのか?どんな種類があるのか?その魅力は何だろうか?」と。
そんな中、山本正勝さんの「絵すごろく 生いたちと魅力」という本に出合いました。



「絵すごろく 生いたちと魅力」(山本正勝・著 芸艸堂

288ページにわたり、すごろくのことだけが書かれた本で、私のすごろくに対する探求心を大いに刺激する内容。
「こんな本が世の中にあるんだ!」という驚きと喜びがありました。
同時に「こんな本を書いた山本正勝さんってどんな方なんだろう?」と、ご本人に会ってみたいと思うように。
私は居ても立っても居られなくなり、本の巻末に記載されていた、
私設すごろく資料館・翔奉庵(
すごろくの"勝負と山本さんご夫婦の名前勝と子から命名)宛てに
手紙を出しました。その後、すぐに山本さんからお返事があり、訪問の了承をいただきました。




●翔奉庵 訪問記

2009年82日、私は大阪府箕面市にある翔奉庵を訪ねました。


展望台から箕面の街を一望。左に見えるのは展望エレベーター。


阪急箕面駅前。午後2時の待ち合わせに山本さんは駅まで迎えに来て下さいました。


駅から閑静な住宅街を歩くこと10分。自宅敷地内に建てられた翔奉庵に到着。


箪笥の引き出し全てにすごろくが保管されていました。
一つひとつ丁寧に解説してくださり、エピソードを話していただきました。
柔らかで知性が感じられる穏やかな口調が印象的でした。



部屋いっぱいに納められた、貴重なコレクションの数々。


すごろくは1枚ずつセロファン袋(特注品)に入れられ、ナンバリングされています。


ふりだし・あがりなど各マスの文字入れが未記入の「ジャングル大帝レオ」のすごろく原画。


おひつ型すごろく。
下段から「いろはにほへと」と順にらせん状に上っていき、ふっくらご飯が見える上段があがり。


江戸時代
天保
年間(1830 - 1843)のすごろく。
こちらも「いろはにほへと」で各マスが順に構成されています。


盤双六に興じる様子を描いた中国の彫刻作品。


「浪花みやげ新名所めぐり」(2002216日作)

おみやげとして山本さんからいただいたすごろく。なんと山本さんご自身の作・画です!
小学校時代から、絵は勉強されていたのだとか。すごい画力!
振り出しは「中之島中央公会堂」、あがりは「大阪城天守閣」。
2002年大阪で開催された第8回日本臨床皮膚科医学会総会で出席の皮膚科医全員に大阪土産として配布。



●すごろくへの愛と情熱に溢れる山本さん

山本さんがすごろくの蒐集を始めたきっかけは、
京都の古書店で出合った江戸時代に作られた墨摺りの絵すごろくの木版画だったそうです。
「浮世絵に比べ、絵すごろくは子どもが遊ぶものとして価値が低く見られていたため、
その店では粗末に安売りされていた。それが悔しくて、愛おしさがぐっと込み上がってきた。
絵すごろくの中には美術的価値が高いものがたくさんあるのに、
どうして子どもの遊具というだけで正当な評価をしようとしないのか」
山本さんは誰よりもすごろくに魅せられ、
このすごろくの価値をこの日から50年以上信じ続けてきたのです。


●山本さんのすごろくに影響されて両親と作った「福岡名所双六」


「福岡名所双六」(200987日作)
山本さんからいただいた「浪花みやげ 新名所めぐり」を両親と遊んだ後、
自分たちでも福岡版を作ろう、という話になり、すぐに制作。
福岡の名所としてどこを入れるかを話し合い、それらの場所のイラストを分担して描きました。
それぞれに絵の特徴が出ているのが面白いです。
振り出しは右下の福岡タワー、あがりは中央の山笠です。
中央下部には福岡市の地図があり、名所の位置を確認できます。
今は亡き父との良い思い出になっています。



●オリジナルすごろくが翔奉庵に収蔵

私が制作したすごろく「ぽよんすごろく」「しろくまさんすごろく」はどちらも翔奉庵に収蔵されています。
収蔵ナンバーは7086番と7087番。とても光栄に思います。



翔奉庵収蔵No.7086「ぽよんすごろく」2014715日作)

私が勤務するイムズ6Fの玩具店「つみきや」で開催したワークショップ
「オリジナルすごろくをつくろう!」の見本用に制作。
ぽよんとは私が小学校の頃から20年以上愛用しているオリジナルキャラクターです。
内容は“いち早くぽよん城にたどり着いた者を次のぽよんの国の王様にする、という
王様の言葉を聞いたぽよんたちが、ぽよんの国を旅しながらぽよん城を目指す”というもの。



翔奉庵収蔵No.7087「しろくまさんすごろく」
2011108日作)


しろくまさんすごろく」はプレイヤーがしろくまさんになって、
しろくまさんのふるさとへと旅する冒険すごろく。
最大5人まで遊ぶことができます。
南極を舞台にアザラシさんの背中に乗ったり、かもめさんと空を飛んだり、
時にはオーロラを眺めたりしながら、ゴールの「ふるさと」を目指します。
※下記よりダウンロードして印刷して遊べます。
http://tsumura-creation.com/bg-sugoroku-sirokuma.html
 




●おわりに

私は今回の記事を書くにあたって、了承を得ようと山本さんに手紙を書きました。
2週間後、山本さんから届いた手紙には達筆で次のようにしたためてありました。
「多くの人にすごろくの楽しさを知っていただくために私の方からお願いしたい位です」と。
本当にすごろくのことを愛している方なのだと思いました。
人生を懸けて、愛と情熱を注げられる好きなものがある、というのはなんと幸せなことでしょうか。
 
今年の夏、翔奉庵を再訪しようと思っています。今からすごく楽しみです。




2018年4月吉日
津村 修二





【山本正勝 プロフィール】
1932
年大阪市生まれ。1964年より絵双六の蒐集・研究を始める。翔奉庵主人。
医療法人山本皮膚科・アレルギー科院長。


【翔奉庵 所在地】
562-0001 大阪府箕面市箕面8-4-7









バナースペース