もともと美術やデザインが好きな私は、自分がゲームを作るのなら美しいものをという想いがありました。
そうすることで、ボードゲームに馴染みのない人にも関心を持ってもらえるのではないかと思ったのです。
そんな私の美へのこだわりを細部まで詰め込んだのが2013年に発売した<DX版>です。
「Amen」はまず砂時計が最初にビジュアルとして浮かんだのが始まりだったので
DX版ではその核となる砂時計は満足できる美しいものを採用したいと考えました。
DX版の砂時計は東京硝子工芸(東京・葛飾区)の砂時計職人の金子治郎さんに依頼。
2012年5月、工房へと伺い、金子さんに砂時計を作る様子を見学させていただきながら色々とお話しました。
そのお話の中で「エジプトをテーマにしたゲームであれば、サハラ砂漠の砂を入れるのはどうでしょう?」という
ご提案をいただきました。なんと偶然にもサハラ砂漠の砂が工房にあったようなのです。
これは運命以外の何ものでもないと感じた私はその場でサハラ砂漠の砂を採用することを決定。
その他、天板にロゴマークを入れること、底板に金のネームプレートを入れることをお願いし、
そうして出来上がったのが下の写真の砂時計。見惚れてしまうほどの仕上がりに満足しています。
昔ながらのひょうたん型の砂時計を専門に作る工房というのは驚くことに現在日本でたった二つしかないそうです。
さらに驚きなのが、その一つが金子治郎さんの東京硝子工芸、
そしてもう一つがそのお兄様の金子實さんがやられている金子硝子工芸。
つまり、ひょうたん型砂時計を作っているのは金子御兄弟だけなのです。
以前はたくさん工房もあり、職人も多くいたそうなのですが、砂時計自体の需要が減ったこと、
外国で大量生産されたものが安価で買えるようになったこと、
作る過程が大変な割にそれに見合った利益を生まないことを理由に次々とその工房、職人が減っていったそうです。
だからこそ、金子御兄弟の工房や技術は非常に希少であり、決して無くしてはならない日本の宝だと思います。
DX版の砂時計。
天板にロゴを入れています。
金のネームプレートに「Amen」の文字。
DX版の駒には建築の内装の壁に使用されるモザイクタイル(イタリア産)を採用。
土から発色させている無釉(釉薬を使用していない)タイルで独特の風合いが魅力です。
また、磁器質であるので盤面に駒を置いた時のカチッという金属性の清音が耳に心地よいです。
手にした時の冷たい感触も大変気に入っています。
メーカーによると"世界でも類を見ない逸品のタイル"だそうです。
シートに接着された石を1個1個もぎ取った後、そのべたつきを熱で焼き飛ばしています。
●アート作品としての価値
美しさへのこだわりを詰め込んだ「Amen」<DX版>はアート作品としても評価されます。
2016年9月には福岡アジア美術館で開催された「躍動する現代作家展」(主催:空間芸術TORAM)に出展。
ボードゲームの垣根を超え、芸術品として作家・美術愛好者を始め、多くの来場者に賞賛されました。
●海外からの評価
2015年、ブラジルのボードゲームサイト「Clube do Tabuleiro de Campinas」では、
"芸術的な外観の美しさだけでなく、アブストラクトゲームでありながらダイス運に依存するところや、
シンボリックな砂時計が各ラウンドの時間を管理するところなど、ゲームデザインとしても興味深いものがある"と
外観だけでなくゲーム性まで高く評価していただきました。
Clube do Tabuleiro de Campinas「Amen!」
2019年、アメリカ・ワシントン州から「美しいボードゲーム」としてDX版のご注文をいただきました。