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●「Amen」を作るきっかけ


Amen」は映像作家の冨久タクロさんとの出会いから生まれました。

2006年、冨久さんとは従兄弟の結婚披露宴で知り合いました。
当時、私はボードゲームを作ることよりもクラブミュージックを作ることに夢中になっていました。
自作曲を聴いてもらったところ、冨久さんが制作中だったダンサー・長谷川三枝子さんの
ドキュメンタリーDVD「Hasegawa-Life」にその中の1曲が採用になりました。


その時「他に何か作ってるものないの?」と聞かれ、私はすぐに子どもの頃から作ってきたボードゲームが思い浮かび、
それで後日見てもらいました。ゲームを見た冨久さんは「これ、商品化できるよ」と言ってくれました。
その一言から自作ゲームの商品化への夢を見ることになります。
某ゲーム会社に知人がいた冨久さんはその知人へのプレゼン用に映像を撮って協力してくれました。
これまで作ってきたゲームから5種に絞ってプレゼンしたのですが、どれもルールが煩雑で商品化は厳しいと評価。

そこで、シンプルなルールを意識し、商品化を見据えて作ったのが「Amen」でした。
砂時計が盤面の真ん中にあって、その両隣にピラミッドがあって・・・というビジュアルから構想しました。
原案が出来たのは2009930日のこと。しかし、会議止まりで商品化には至りませんでした。



当時の制作ノート。「PYRAMID STONES」と仮題を付けていました。
短く3文字で検討していたところ、エジプトの神々の王アメンを由来とする「Amen」を採用



砂時計の砂が落ち切った時、どうなっていたら勝ちにしようか、とゲームデザインを詰めていきました。


2009年、メーカーへのプレゼン用に作った「Amen」企画書。


イラストレーターの姉・津村ゆかりに描いてもらったイメ―ジイラスト。



私は「Amen」が面白いという自信があったので、別のさまざまなメーカーに売り込みを開始。
十社以上に手紙を書いて送りましたが、やはり商品化への道は厳しいものでした。

2011年。一念発起し、ツムラクリエイションを立ち上げ、「Amen」を自主製作する道を進みました。
このまま自分の中のアイデアとして閉じ込めておきたくなかったのです。
これは世の中に出すべきものだ、と。
そうして今に至るのですが、ボードゲームクリエイターとしての道を歩むきっかけを与えてくれた、
冨久さんとの奇跡のような出会いに今でも感謝しています。





●ボードゲームデザイナーの大先輩

20115月。「Amen」を自主製作するにあたって、私はまず同じようにオリジナルゲームを作っている方が
いないかをネットで検索しました。右も左もわからない自分のお手本になるような人がいないか、探しました。
そこで見つけたのが、山本光夫さんのタイル製の創作ゲームの紹介動画。電撃が走ったように「これだ!」と思いました。
私が目指している方向性のチェスのような美しいボードゲームをまさに山本さんは作られていたのです。

山本さんは株式会社ギフトボックスの代表としてタイルアート制作の仕事を持ちながら、
LOGY GAMESという名でオリジナルボードゲームを30種以上考案し、すでに販売もされている方。
ボードゲームデザイナーの大先輩です。

「この方に会ってアドバイスをもらいたい!」
私はすぐにアポイントを取り、その動画を見た一週間後には東京・奥多摩にある山本さんの工房を訪ねていました。
試作品を遊んでもらいましたが、「面白い」と評価して下さり、一安心しました。
この時、一台は<ディスプレイ版>として山本さんに特別に安価で作っていただきましたが、
コスト面を考えた時に最初から盤面をタイルで製作し販売するのは厳しい(ある程度認知されてからが良い)と
アドバイスを受け、まずは低いコストで製作・販売できる<通常版>を作ることにしました。
盤面がタイルの<DX版>はその後に作ることになります。


「Amen」<ディスプレイ版>が初めて自宅に届いた日はとても嬉しかったです。


「Amen」<ディスプレイ版>




●「Amen BGM」の作曲者

私が高校生の頃に受講した 「TK MUSIC ONLINE」(小室哲哉音楽講座)がきっかけで知り合ったのが、
後に「Amen」の音楽を提供してくれることになる若林正訓さん。

ネット上にオリジナル曲を公開し、評価や感想をもらうというのがその講座の最終課題だったのですが、
そこで「かっこいい」と私に感想をくれたのが彼でした。
彼も曲を作る人で、聞くとなんと同い年で誕生日も3日違い。
そこから埼玉に住む若林さんとは曲の交換(当時はMDでした)を通じて親交を深めていきました。
実際に埼玉まで会いに行ったことが何度かありますが、純朴でとても心の優しい人でした。

2011年、私が作った「Amen」にインスピレーションを受けて作ったという彼の曲が私の元に届けられました。
世界観によく合っていて、すごく感動しました。

さらに同年11月「ゲームマーケット」に初めて出展するために東京へと出掛ける前日には
「Amen」をイメージした新曲が届けられました。

そのCDジャケットには彼の字で「GoalにしてStart」とメッセージが描かれていました。
「Amen」を形に出来たことは一つのゴールであるけれど、ここからが本当のスタートだ、と。
私はその曲をプレイヤーに入れて、東京へと発ちました。なんと心強かったことでしょう。
その翌年には、彼の作ってくれた音楽をCD化し、商品に付属させるようになりました。

ゲームイベントなどで「Amen」の音楽を聴く度に彼の音楽性の素晴らしさを発信できることを
嬉しく、そして誇らしく思っています。




CDには若林正訓作曲の「砂織-Saori-」「神建遊戯」の2曲を収録。




●「Amen」<DX版>へのこだわり”美しいゲームを作りたい”

もともと美術やデザインが好きな私は、自分がゲームを作るのなら美しいものをという想いがありました。
そうすることで、ボードゲームに馴染みのない人にも関心を持ってもらえるのではないかと思ったのです。
そんな私の美へのこだわりを細部まで詰め込んだのが2013年に発売した<DX版>です。

Amen」はまず砂時計が最初にビジュアルとして浮かんだのが始まりだったので
DX版ではその核となる砂時計は満足できる美しいものを採用したいと考えました。


DX版の砂時計は東京硝子工芸(東京・葛飾区)の砂時計職人の金子治郎さんに依頼。
20125月、工房へと伺い、金子さんに砂時計を作る様子を見学させていただきながら色々とお話しました。
そのお話の中で「エジプトをテーマにしたゲームであれば、サハラ砂漠の砂を入れるのはどうでしょう?」という
ご提案をいただきました。なんと偶然にもサハラ砂漠の砂が工房にあったようなのです。
これは運命以外の何ものでもないと感じた私はその場でサハラ砂漠の砂を採用することを決定。
その他、天板にロゴマークを入れること、底板に金のネームプレートを入れることをお願いし、
そうして出来上がったのが下の写真の砂時計。見惚れてしまうほどの仕上がりに満足しています。

昔ながらのひょうたん型の砂時計を専門に作る工房というのは驚くことに現在日本でたった二つしかないそうです。
さらに驚きなのが、その一つが金子治郎さんの東京硝子工芸、
そしてもう一つがそのお兄様の金子實さんがやられている金子硝子工芸。
つまり、ひょうたん型砂時計を作っているのは金子御兄弟だけなのです。
以前はたくさん工房もあり、職人も多くいたそうなのですが、砂時計自体の需要が減ったこと、
外国で大量生産されたものが安価で買えるようになったこと、
作る過程が大変な割にそれに見合った利益を生まないことを理由に次々とその工房、職人が減っていったそうです。
だからこそ、金子御兄弟の工房や技術は非常に希少であり、決して無くしてはならない日本の宝だと思います。


DX版の砂時計。


天板にロゴを入れています。


金のネームプレートに「Amen」の文字


DX版の駒には建築の内装の壁に使用されるモザイクタイル(イタリア産)を採用。
土から発色させている無釉(釉薬を使用していない)タイルで独特の風合いが魅力です。
また、磁器質であるので盤面に駒を置いた時のカチッという金属性の清音が耳に心地よいです。
手にした時の冷たい感触も大変気に入っています。
メーカーによると"世界でも類を見ない逸品のタイル"だそうです。



シートに接着された石を11個もぎ取った後、そのべたつきを熱で焼き飛ばしています。




●アート作品としての価値

美しさへのこだわりを詰め込んだ「Amen」<DX版>はアート作品としても評価されます。
2016
9月には福岡アジア美術館で開催された「躍動する現代作家展」(主催:空間芸術TORAM)に出展。
ボードゲームの垣根を超え、芸術品として作家・美術愛好者を始め、多くの来場者に賞賛されました。






●海外からの評価

2015年、ブラジルのボードゲームサイト「Clube do Tabuleiro de Campinas」では、
"芸術的な外観の美しさだけでなく、アブストラクトゲームでありながらダイス運に依存するところや、
シンボリックな砂時計が各ラウンドの時間を管理するところなど、ゲームデザインとしても興味深いものがある"と
外観だけでなくゲーム性まで高く評価していただきました。
Clube do Tabuleiro de Campinas「Amen!」

2019年、アメリカ・ワシントン州から「美しいボードゲーム」としてDX版のご注文をいただきました。









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